テアトル東京(銀座)

61年前に観た映画「不思議な世界の物語」の復刻版を見つけた。原盤は保管倉庫が水害にやられて復刻不可能と云われていたのに…70mmフィルムを3台のカメラに装填して同時撮影をするシネラマ方式。上映は当時、日本に2館しかなく、京橋のテアトル東京では3台の映写機を同時に回して25メートルプールより大きな縦9m×横30mの巨大スクリーンに映し出す。館内は椅子から壁から緞帳?幕までオレンジ一色に統一、映写機3台にそれぞれ映写技師が着き、7ch音響には専門の音響技師と館内照明にも照明マンが着いたと云う。ゆっくりと照明が落ちながらスクリーン前の幕が静かに開くと目の前いっぱい湾曲した巨大スクリーンが現れる….もはや映画上映を超えたド迫力と四方八方から響く音に17歳の田舎者は腰を抜かす寸前だった。そうだ「役者や監督にはなれないが、この洗練された映画館のスタッフならやれそうだ」と。大谷翔平にはなれないけどドジャース球場のスタッフになって観客を愉しませる仕事なら出来るかも知れない、思えばこのテアトル東京の仕掛けが世間知らずで身のほど知らずの若造をテレビに向かわせた。